熊と猫のECブート放談

第2話 75年メンフィス公演:
「Sunshine of Mid-south」(2CD/Slunky) vs 「The days of vulgar clothes」(2CDR/WW) vs
「In Memphis every crowd」(2CD/Thirdrate)
Mid-south coliseum, Memphis 6/18/1975



Sunshine of Mid-south          The days of vulgar clothes        In Memphis every crowd


「Sunshine of Mid-south」の収録内容
Disc 1
1. I shot the sheriff/ 2. Layla/ 3. Bell bottom blues/4. Motherless children/5. Let it grow/
6. Can’t find my way home
Disc 2
1. Mainline Florida/ 2. Driftin’ blues/3. Ramblin’ on my mind/4. Sunshine of your love/
5. Let it rain/6. Blues power/7. Badge


猫:さて今回はダブりもの比較です。最近EC専門レーベルが増えて、同音源のダブりものも目立つようになりました。
  昨年末に出たこの75年Memphis公演なんて、3レーベルがバッティングしちゃいましたね。

熊:そうですね。最近の同音源のダブリものは、この75年Memphis公演に限った事ではなくて、
  ざっと調べても以下の公演があります。
  9/20/1980 Copenhagen 「Stamping in the ground (Silver horse)」,「1980 (WW)」
  6/7/1982 Minneapolis 「Blow wind blow (WW)」,「Simple truth (Grace fudge)」
  あと少し前だと、74年Buffalo公演、75年St. Louis公演、75年大阪、京都公演などもそうでした。
  75年St. Louis公演を除くと、いずれもWWとダブっているというのが面白いですね。
  それはさておき、まずは75年Memphis公演です。

猫:75年Memphis公演を収録しているのは「Sunshine of Mid-south」(Slunky)、
  「The days of vulgar clothes」(WW)、「In Memphis every crowd」(Thirdrate)の3タイトルで、
  ブートマニアとしてはどれを買うべきか迷うところですが、
  ブート誌でもこれら3つをきっちり比較したレヴューはやってないんだよね。

熊:そこが一番知りたいんですけどね〜(笑)。

猫:GW誌(No. 80)ではSlunky盤とThirdrate盤との比較はあったけど、WW盤だけはレヴューアーが別で、
  よく読まないと3者が同音源だと判らないし・・・
  いや、注意して読んでも3者が同音源とは書いてないなあ(苦笑)。
  一方B誌(Vol. 19)ではThirdrate盤は取り上げておらず、残りの二つもどちらがいいのかはわざとぼかした書き方をしています。
  まあブート誌にはいろいろ事情があって、どっちがいいとは書きにくいだろうし(笑)、
  それを非難するのがこの企画の趣旨ではありません。さて音質ですが、全体としてまあまあのSBですよね。
  3つを比較するとどうでしたか?

熊:まず、WWは低音が良く出ていて、ヒスノイズがないです。Slunkyはヒスノイズが多いですね。
  ThirdrateもノイズがあるけどSlunkyよりクリアです。ヒスノイズに関していうと、
  Slunkyは前半部分はThirdrateよりノイズが少ないが、後半部分はSlunkyの方がノイズが多く、音質が落ちます。

猫:僕はThirdrateはまだ聴いてないんだけど、WWとSlunkyを比べると、WWの方がいいですね。
  Slunkyはノイズが多くて、ノイズの中に音が埋もれてるみたいな感じ。

熊:音質的にはSlunkyは3タイトルの中では一番劣ると思います。あとの2タイトルは、
  よりクリアだがノイズがあるThirdrateと、低音重視でノイズの無いWWという特徴があって、
  優劣つけがたいですね。またThirdrateは序盤、他の2タイトルには無いデジタルノイズが所々入ります。

猫:WWはピッチが正確というのも売りのひとつのようだけど?

熊:たしかにピッチもいろいろで、Slunkyは若干高く、WWはほぼ正確。一方Thirdrateは明らかに低いです。
  WWと比べると約-3%ですね。

猫:-3%というと、半音以上低いですね、ちょっと聴き辛いかな。収録内容はどうでしょう?

熊:この日は1曲めが「I shot the sheriff」で、この時期としては変則的セットだったようですが、
  この出だしがそれぞれ違います。WWは頭の4音が欠け、Slunkyは音は欠けていないが、
  頭の1音目がわずかにフェイドイン、Thirdrateはわずかながら演奏前部分から収録されているので、
  「I shot the sheriff」は完全に入っています(但しデジタルノイズが入る)。

猫:ということは冒頭部分に関しては、Thirdrateが一番いいわけね。
熊:あと「Mainline Florida」には3タイトルともカットがあります。それからこれもポイントですが、
  Slunky盤にはノークレジットながら、「Blues power」のあとに、他の2タイトルには収録されていない
  「Badge」が収録されているんですよ。但し不完全収録ですが(約3分)。

猫:残念ながら不完全ですね。この部分、ノイズが多くて音悪いね。
    Slunky盤のアドバンテージというにはちょっと弱いかなあ。

熊:確かにそれ以前の部分より音質が落ちます。それにこの「Badge」は、
    他の部分とは音の質感が違うように感じるんですよ。
  ヒスノイズはより多くなるし、特にスネアの音を聴いていると、オーディエンス録音じゃないかとも思います。 

猫:う〜ん、確かに前の「Blues power」との間にカットがあるし、若干オーディエンスっぽい音にも聞こえますね。
  僕が気づいたのは、「Badge」ではそれまでよく聞こえていたバスドラの音が聞こえないですね。
  でももしこの「Badge」がソースが違うとすると、そもそも同じメンフィス公演なのか怪しくなりますね。
  仮に「Badge」がこの日の演奏だとして全曲収録なのかな?

熊:「Badge」を含めて13曲、時間にして約90分ですね。本編ラストが「Blues power」で、
  アンコールが「Badge」だとしても不自然ではないですね。

猫:この頃は、まだサンタナは一緒じゃなかったんだっけ?アンコールは「Eyesight to the blind」じゃないんですね。
  じゃあまあ、Slunkyは全曲収録(?)かも知れないということで。

熊:75年USツアーのSB音源はありそうで意外と少ないから、全曲収録だとすると貴重ですね。

猫:そうですね。75年USツアーの代表的音源は大体オーディエンスですよね。
  さて、総合的にこの3つに優劣をつけるとどうですか?

熊:3タイトルとも一長一短あって中々難しいですよね。

猫:どれかひとつ選べといわれたら?

熊:選ばなきゃいけないんですかぁ〜?(笑) とりあえず私が選ぶとすると、
  「I shot the sheriff」の頭のカットに目を瞑ってWWという事になるかな?

猫:つけくわえると、WW盤は74年7月5日PittsburghのSB音源も収録していて、初ブート化音源が7曲聞けます。
  その意味ではコストパフォーマンスもいいですね。WWの音は個性的というか、ちょっとクセがあるイコライジングで、
  好き嫌いがあるかもしれませんが。(第2話おわり)